「エンターテイナー」であるということ。

平成27年4月26日、広島文化学園HBGホール。

田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2015 Spring *Sunny side Lily*」に行ってきた。

 

地元から一番近い福岡での公演日に、既に別の予定が入っていたこと。

その次に近い開催地が広島で、日程的にも参加可能だったこと。

そして何より、去年のツアーで広島会場の雰囲気がすごぶる良かったこと。

 

こんな動機で来場を決めたんだけど、結果として大正解だった。

 

セットリストとかMCの詳細については、konさんとこ新宿鯖さんとこを参照。

 

田村ゆかりゆかりん)に対する俺の評価は「一流のエンターテイナー」。

自身の関わる様々な場において、聴衆を「entertain」つまり「楽しませる」ことに全力を注いでいる人、だと思っている。

そして「来場者を楽しませる」事にかけて、ゆかりんのライブは当代髄一の空間を演出できている場だと思う。聴衆(オーディエンス)と楽しい空間を作り上げるために、全ての演出・演目・舞台装置がセッティングされているし、何より聴衆自身がこの空間を楽しみ、共に作り上げることを喜びとして来場している。

ゆかりんは「聴衆を楽しませよう」とするし、俺たちは「自分たちも楽しみたいし、何よりゆかりんにも楽しんでもらいたい」と願う。「ゆかり王国」ってのはそうやって創造された幸福な空間全てを指すもので、その楽しさ・心地よさに触れ、惹かれた人が「王国民」なんだと思う。

 

だからこそゆかりんは男爵やメイツ、桃猫団に続いて「ゆかり王国、オーディエンスのみんなーっ!」と、俺らの事をライブの構成メンバーとして紹介してくれるんだと思ってる。毎回が演者と聴衆による「いかに相手を乗せるか(そして自分も楽しむか)」の真剣勝負ですよ。ある意味プロレスだプロレス。

 

そして去年も今年も、広島のゆかりんライブはかなり高いレベルで「幸福な空間」を創出できてたんじゃないか…と、終了後の多幸感の中で思う。

 

俺がゆかりんの楽曲で一番好きなのは「バンビーノ・バンビーナ」なんだけど、ライブで聴きたい曲、思いを伝えるコールがしたい曲ってのが別にあって。

「世界一かわいいよ!」と伝えられる「fancy baby doll」(これは鉄板曲だけど)。

「大好き!」「笑って!」と伝えられる「Super Special Smiling Shy Girl」。

そしてもう1曲が「ありがとう!」を伝えられる「Graditude」なのです。

 

今回のライブツアーでは、セットリストの序盤に「fbd」が組み込まれてて、恒例のティモうさ投げもなし。これは正直驚いた。

おかげで既に前半の段階で終盤並みの疲労具合だったけど、ライブ終盤の「定番の盛り上がりシークエンス」を排した構成になるわけで。

それでもちゃんと終盤にピークを設けられたのは、今後のライブを考えたときにパターンの広がりを想定できたんじゃないかと思った。

 

そして今回、広島公演の、ある意味ハイライト。

アンコール2曲目の「Graditude」途中で、ゆかりんが泣いて唄えなくなった。

そのとき、場内オーディエンスから自然と始まった合唱。満場の「ありがとう」。

俺も合唱に加わりながら、もらい泣きしそうになるのを必死に堪えてた。

そして「あーこれゆかりんはたぶん「嬉しいけど悔しい」だろーなぁ」と思ってもいた。

 

ライブ中のMCでもしきりに「楽しかった思い出はすぐ忘れる。嫌なことは覚えてる」て言ってたのは、「聴衆を楽しませることが第一であり喜び」って視点だと、まず「聴衆を楽しませられなかったこと」への反省とか後悔が残っちゃうのかなぁと。だから「泣くほど感極まってる」状態の幸福感よりも「自分が泣いちゃって唄えない」ことが与えるマイナスを大きく捉えちゃうんじゃないかと。そんなことを考えてた。

曲のあと、MC前にステージ端に引っ込んだのも、「ゆかりん」としてMCするための「仕切り直しの時間」だったんだろうし、その後の「みんなで記念写真撮ろ?」にも、マイナス状態を挽回するためのサービス的な意味合いもあったんじゃないかと思った。

 

そんな「マイナス」を抱えているところへ飛び出した、オーラス曲「あのねLove Me Do」での、語りかけるような広島弁「あんね、じゃけぇね、ほんとなんよ」

中盤のMCで「(その土地の方言で喋るのは)外タレさんの日本公演みたい」っつーネタフリはあったといえ、ほぼ完璧な不意打ち。正直「やられたっ!」と思った。

一発逆転。一撃必殺。回避不能。相手は死ぬ。

この一撃を引き出したのは間違いなく、演者と聴衆がここまで積み重ねてきた、共同作業としてのライブ進行だった。

これがあるからライブは楽しいし、その場に我が身を置きたくなるのだと。

 

最後に「また楽しい思い出を創りに来たい」という言葉を聞きながら。

あと何度、今回のような「至福の時間」を共有できる場面に遭遇するかわからないけれど。

それでもライブに参加できる限りは、それを望んで、それを目指していたいと思った。

 

本当に幸せな空間でした。改めて。

「ありがとうございました。」