劇場アニメ映画「この世界の片隅に」製作支援ミーティング in 大阪

大阪・大東市で開催された、劇場アニメ映画「この世界の片隅に」の製作支援ミーティングに行ってきた。

 

会場は市民会館2階のホール。入口前にはすずさんと重巡青葉のポスター2枚。

受付後、ブックレットとサポーター証の缶バッジをいただいて場内へ。

 

ステージ前で、原作カットと並べて作中の美術デザイン等を展示。

再現度もだけど検証がすごい。

下手側に青葉のポスターパネルが飾られてて、その上にポストイットで応援メッセージを貼り付けられるようになってた。

向かって右に、前日の広島で集まったメッセージが貼られたボードがあって、左のポスターを大阪の参加者で埋める格好。

俺も一筆書かせていただきました。

 

中央やや後ろ寄りに着席。場内はだいたい200人弱かな。

14時、定刻になり開始。登壇者の自己紹介後、現在の進捗状況について報告。

脚本と絵コンテは終了、先行していた原画は4割ほど。

ファンド成立後にスタッフを増員して、今は美術専任の人間が入って動いてる。

キャストについては秋にオーディションを行なって年内に決定。

映画の完成は2016年6月で、2016年10月の公開を予定している。

 

出資者についても簡単に説明があった。

関西圏在住の出資者は250人くらい。てことは8割が来てる計算か。

全体3,374人のうち、男性が75~6%くらい。

「決して男性向けの内容じゃないと思うんだけどねぇ(苦笑)」

また年齢のボリュームゾーンは42歳とのこと。

「決して42歳向けの内容じゃないと思うんだけどねぇ(苦笑)」

…そんな話を聴く42歳男性であった。

 

続いて片渕監督による解説とパイロットフィルム上映。

この日の解説テーマは「クリスマス」と「すずさんの服装」について。

 

監督の前作「マイマイ新子」では昭和30年ごろの「田舎の幼少期」が描かれた。

そこは監督自身の幼少期から10年ほどさかのぼった時代だったけど、地続きのものとして想像できた。

でも更に10年前、昭和20年前後となると、急に断絶した感覚になる。

実際、そんなに変わるもんじゃなかったはず。その例として出てきたのがクリスマス。

クリスマスのサンタクロースは戦前、大正時代から浸透してた。

海軍のお偉いさん方も、クリスマスパーティーを開催した記録が残ってる。

クリスマスセールの企業広告とか、モールでできたサンタの飾り物とかの写真を提示

 

太平洋戦争が始まっても、最初の2年くらいは家にサンタが来てたらしい。

昭和18年に「今年からサンタは来なくなった。代わりに大黒様がプレゼントを持ってくる」てな話が記録に残ってるそうで。

 

で、なんでこのクリスマスの話が出たかというと、本編の冒頭にあたる「冬の記憶」に関わる。

原作だとこれは昭和9年1月、すずさんが広島の繁華街へ卸の海苔を届けに行く話しなんだけど。

この前年、昭和8年に皇太子(今上天皇)が生まれてるから、翌1月の繁華街なら誕生祝賀で盛り上がってるはずだと。

その風景に関する資料が集まらないので、このエピソードの時期を前倒しして「昭和8年12月22日」に設定した、と。

そうすると「昭和8年のクリスマス前」をデザインする必要が出てきて…という話。

 

また本編でのすずさんの服装から、当時の「和装から洋装へ」の移り変わりについての話になり、当時の小学校の卒業アルバムからの確認など。

昭和8年ごろに洋服の子が出始めて、昭和10年には洋服の方が多くなっていく様が、年を追って示された。

戦時中もスカートやズボン履いてた写真とか、もんぺは今で言うジャージみたいな感覚で、よそ行きで着る服じゃなかったとか。

 

これらの例に限らず、とにかく反映されてる資料の物量が半端ない。

「時代の記録と記憶から、風景を再構築する」作業の途方もなさを痛感した。

 

そして流れるパイロットフィルム。そこにあったのは間違いなく「この世界の片隅」の風景だった。

何かが繋がった。

自分の幼少期の風景と、「そこ」が地続きなんだ、そう思ったら涙が出た。

 

更に本編冒頭となる「冬の記憶」のフィルム。音声・音楽なしで6分ほど。

完成したのは15日とのことで、広島と大阪のみで上映された。

これが広島で流れたということは、中島本町のシーンを「地元の方」にお見せできたということで。

これで俺の出資目的は半分くらい果たされたようなモンです。いやホントに。

 

あぁ本当に映画になるんだ。そしてここに「戦中の広島市内の音」が乗るんだ…。

 

完成には、この20倍のフィルムが必要になるとのこと。まだ始まったばかり。

それでもこの日、この映画が期待に違わぬ素晴らしいものになることは確信できた。

 

2016年秋。公式からの情報とともに、公開を楽しみに待ちたいと思う。

 

 

(余談)
支援メンバーの大半が10,000円以上コースになり、クレジット表記をどうするか悩ましいとのこと。

そこは洋画風で画面いっぱいに早いスクロールでもいいんじゃないかと。

つーかこれ海外版も作ってほしいなぁ。一応それを見越してクレジット名は本名のローマ字表記で希望出してるんだけど。